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特サビ動態統計 1人当り売上高2,933万円の理由が分からない(1)

■ まともな答えが返ってこない調査が政策基礎でいいのかという話■

 筆者がまとめたICT関連株式公開企業の2016年業績は、就業者378万4,899人で、売上高は110兆2,868億70百万円。そこからハードメーカーやインターネット・サービス業などを除いた323社だと、1社当りの就業者数は1,758人、1人当り売上高は1,964万円だ。これに対して経済産業省が実施している特定サービス産業動態統計【情報サービス産業】は、1社当り150人、1人当り売上高は2,933万円という。経産省ひいては国全体のIT関連政策の基礎となるデータの1つである。これってどういうことなのか、質問をぶつけてみた。

■ 特サビ動態統計と実態調査 ■

 特定サービス産業動態統計調査は、対事業所サービス業として、情報サービス業、物品賃貸(リース/レンタル)業、広告業、クレジットカード業、エンジニアリング業、インターネット付随サービス業m機械設計業、自動車賃貸業、環境計量証明業の計9業種について、毎月の売上高と従業員数を調べている。情報サービス業は1988年1月から実施され、月ごとの前年同月比が景況の判断や産業施策に資するデータとして重宝がられている。

 なぜ特サビ動態統計調査に目を向けたかというと、筆者の業績調査と比較するためだった。今年の2月20日までに、12月期決算企業の12か月業績が出そろった。1月期〜12月期553社の12か月業績を集計していたところ、2月15日付で特定サービス産業動態統計調査の2016年12月分確報が発表された。同調査の1月〜12月の数値を合算すれば、2016年の売上高、就業員数が算出できると考えたのだ。

 もう一つ、よく似た調査に同じく経産省が実施している「特定サービス産業実態調査」があるのだが、最新のものは昨年7月実施だし、「ソフトウェア業」と「情報処理・提供サービス業」の2つのファイルを集計しなければならない。かつ実態調査の「ソフトウェア業」は1万8,094社、「情報処理・提供サービス業」は同8,786社の計2万6,880社で、従業員4人以下の企業を含んでいる。さすが「実態」調査なるべしだが、筆者の553社と比べるなら、動態統計調査2,498社のほうが近い。

■ 1人当たり売上高で比較する ■

 繰り返しになるが、本稿では就業者1人当り業績で前年同期比を出したり、業種間の相違や特性を示す指標として使っている。553社の就業者総数は378万4,899人、うち正規雇用者は335万3545人、売上高は110兆2,868億70百万円なので、1社当り就業者数は6,844.3人(うち正規雇用者数は6064.3人)、就業者1人当り売上高は2,913.9万円(正規雇用者1人当り売上高は3,288.7万円)となる。

 ただし553社には旧メインフレームメーカーやパソコン周辺機器メーカー、情報家電メーカー、通信サービス会社なども含まれている。特サビ動態統計調査に同期させるには、受託系のBPO、FMS/システム運用管理、受託ソフトウェア開発、情報処理・複合サービス、販売系のゲームソフト、システム販売、パッケージ・ソフトウェア販売、ミドルウェア・ライセンス販売、ネット系のASPの計9業種で再集計する必要がある。その結果は、323社の就業者数は56万7,762人(正規雇用:43万9,579人/非正規雇用:12万8,183人)、売上高は11兆1,514億59百万円。正規雇用者ベースの1人当り売上高は2,536.8万円、非正規雇用を合わせた就業者1人当りだと1,964.1万円となる。

 一方、特サビ動態統計調査は毎月の調査対象企業数の誤差を補正すると2,502社、「常用従業者」は33万0,731人、「他の企業からの派遣受け入れ従業者」は1,066万7,789人日、売上高は10兆9,771億57百万円だ。売上高を「常用従業者」で割ると3,319.1万円となる。

 もう一つ、人日と表示されている「他の企業からの派遣受け入れ従業者」を年間の人数に換算する必要がある。土曜・日曜と祝日をすべて休業した場合、年間就労日数は245日なので、これで1,066万7,789人日を割ると4万3,541.9958人=4万3,542.0人という数字が得られる。「常用従業者」33万0,731人に4万3,542人を加えた37万4,273人が就業者総数とすれば、1人当り売上高は2,932.9万円だ。

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特サビ動態統計 1人当り売上高2,933万円の理由が分からない(2)

■ 従業員300人以上が中心か ■

 気になるのは1社当り就業者数だ。特サビ動態統計の1社当り就業者数は、「常用従業者」が132.2人、「他の企業からの派遣受け入れ従業者」が17.4人、計149.9人。対して株式公開企業323社の1社当り正規雇用者は1,360.9人、非正規雇用者は396.9人、計1,757.8人で11.7倍の違いがある。10倍を超える差は、さすがに「あり得る範囲」ではない。

 参考までに、経産省が実施しているもう一つの「特定サービス産業実態調査」、その【ソフトウェア業】を見ると、企業数は1万8,094社、従業者数は66万8,974人、売上高は12兆9,744億29百万円なので、1社当り従業者数は36.9人、従業者1人当り売上高は1,939.4万円。【情報処理・提供サービス業】は8,786社、29万3,990人、6兆7,745億40百万円なので、1社当り33.5人、1人当り2,304.3万円となる。

 では、特サビ実態調査【ソフトウェア業】【情報処理・提供サービス業】の従業員規模レベルをどのレンジに絞り込むと、特サビ動態統計調査の1人当り売上高に近づくかを調べると、おおむね「従業員300人以上」ということになる。このレンジだと、【ソフトウェア業】の1人当り売上高は3,081.6万円、【情報処理・提供サービス業】は3,132.1万円、全体では3,100.0万円だった。

 どうやら特サビ動態統計調査の調査対象企業は、ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業に分類される従業員300人以上の企業であるらしい――という程度に推測したのだが、だとすると合点が行かないことが生じてくる。1社当りの従業者数だ。実態調査で1人当り売上高が3100.0万円の従業員規模は751.3人なのに、動態統計調査は132.2人(「他の企業からの派遣受け入れ従業者」を合わせると149.9人)と5分の1以下だ。従業員100人〜150人のITサービス会社となると、取引ポジションは3次請け以下、1人当り売上高は1,000万円未満というのが業界の常識ではないか。 

■ 経産省大臣官房と一問一答 ■

 で、経産省の担当部署にメールで尋ねてみた。質問した先は「大臣官房調査統計グループ」だ。回答してくれたのは「サービス動態統計室サービス産業動態統計班」ということになる。経産ペンクラブ在籍当時、統計値発表の席で同じような質問をしたことがある。その時は役人言葉で霞が関文学を語られて、埒が開かなかった。

 Q1.平均従業員数が130人強なのに1人当り年間売上高が3,000万円超(12か月合算)って、実際と随分違いますよね。どのような企業を調査なさっているのか、ご教示頂けませんか。

 A1.統計法上の制約から特定の企業名をお教えすることは出来ません。  なお、本調査の調査対象は、特定のサービス業に属する事業を営む企業のうち当該業種の全国の年間売上高の概ね7割程度をカバーする売上高上位の企業になります。直近では、平成27年1月分から平成24年経済センサス活動調査の情報を基に調査対象の見直しを行っています。


 う〜ん、またか。

 「当該業種の全国の年間売上高の概ね7割程度をカバーする売上高上位の企業」と言うからには、当然ながらNTTデータ、野村総合研究所、TIS、富士ソフト、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSKといった企業が入っているに違いない。  以下、一問一答形式のQ&Aを掲載する。


 Q2.統計表に記されているのは「事業所」。2,500という数字は「社」ですか、支社を含む事業所数ですか?

 A2.2500社については、経済センサス−活動調査等を母集団とし、年間売上高(全国計)の概ね70%をカバーするまでの売上高上位の企業・事業所を対象とした、支社を含む事業所数です。


 Q3.情報サービス産業協会(JISA)の加盟企業600社で情報サービス産業の売上高の7割を占める、と聞いています。概ねJISA会員企業の本社・支社と理解していいですか?

 A3.調査対象は、経済センサス−活動調査等を母集団とし、年間売上高(全国計)の概ね70%をカバーするまでの売上高上位の企業・事業所が対象となっています。なお、特定サービス産業動態統計調査(情報サービス業)の対象事業所には、JISAの加盟企業となっていないゲームソフトを開発・販売する事業所も対象としています。


 Q4.としても、1事業所あたりの従業員数が132人というのは解せません。NTTデータ1社で8万4,000人。全体33万人の20%超をNTTデータ1社で占めることになりますが。

 A4.特定の企業についてのお答えは出来ませんが、本調査で公表している常用従業者計は、経済センサス−活動調査等を母集団とし、年間売上高(全国計)の概ね70%をカバーするまでの売上高上位の企業・事業所を対象とした、情報サービス業務に従事する月末常用従業者数です。(平成28年12月末現在328,988人)


 Q5.私も2004年から継続して、半期ごとに、情報サービス企業の業績集計をしています。例えば2016年3月末現在の3月期決算81社で23万8,000人、売上高は4兆9,200億円。1社当たり3,000人弱、607.5億円、従業員1人当り2,070万円弱です。特サビ動態統計【情報サービス業】の1人当たり3,300万円と大きな差があるので、その違いがどこからきているのかを知りたいと思っています。

 A5.特定サービス産業動態統計(情報サービス業)は、平成28年において、調査企業の当該業務を営む事業所数2,498事業所、常用従業者数328,988人、売上高10兆9,771億58百万円、1事業所当たり131人、43.9億、従業員1人当り3,337万円となります。

 2016年3月末現在の3月期決算81社と調査企業の当該業務を営む事業所数2,498事業所では、把握する対象事業所数が異なるため、売上高上位から把握している特定サービス産業動態統計(情報サービス業)の売上高が多くなっていると思われます。

 また、特定サービス産業動態統計(情報サービス業)で公表している常用従業者計は、情報サービス業務に従事する月末常用従業者数と限定した従業者であるため、各社の決算等で公表される従業者数に比べると少なくなっている点も差を生じさせている要因と思われます。


   だめだ。

 答える気がないか、質問の意味が分かっていないか、まともに答えたらまずいことがあるのか。IT関連施策の基礎となるデータの一つである。情報を隠す必然がどこにあるのか、これでは調査結果の信憑性が疑われる。

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情報化時代の常用漢字 国語審議会が見直し案 [雑感]

 やや旧聞に属するが、5月19日、文化審議会国語分科会が常用漢字表を見直し、196字を追加し5字を削除する答申案を決定した。6月の文化審議会を経て文部科学相に答申、内閣が年内にも告示する予定で、これにより常用漢字は191字増の2,136字になる。文部科学大臣が「情報化時代の漢字使用の目安を」と諮問したのは2005年3月というから、迅速を旨とする情報化時代にあって、同審議会は時代遅れの感が否めない。  常用漢字表は、漢字使用を制限することを目的に1946年に導入された当用漢字表に代わり、1981年に法令や新聞、雑誌、放送など一般社会の漢字使用の目安として作成されたもの。最近でこそ新聞は使用する漢字に独自規定を設けているし、コンピュータのおかげでルビが振れるようになった。自由度は格段に高まったが、20年ほど前までは常用漢字が前提だった。新聞が漢字教育の手段として位置づけられていたためだ。
万葉仮名で「加名川県」
 新聞記者だからといって常用漢字を丸暗記しているわけではなく、コンピュータが適用外の漢字をはじき出してくれる。ワープロで記事を書くようになったとき、国産メーカーが「記者用ワープロ」を作ってくれたが、思うようには売れなかった。記者は縛られたり制限されるのを嫌う。とはいえ神奈川県を本気で「加名川県」と万葉仮名ふうに書いた新人記者がいて、それで筆者は新卒採用のとき、「都道府県名と県庁所在地を漢字で書け」という設問を入れた記憶がある。  読み・書き・算盤の時代は去り、漢字は読めればいい、キーボードを叩けば漢字が表示される、読めなくても文字一覧から探し出せる。UGUISUと打てば「鶯」、YUUUTUと打てば「憂鬱」。画数が最も多い二字熟語はAITAIだが、さすがに「靉靆」は表示されないようなので、しばらく薀蓄のネタとして使えそうだ。ちなみに「靉靆」は〈たなびく雲のさま〉という意味だと、旧仮名遣いの大字林で読んだことがある。  物理学者の田中館愛橘博士(1856~1952)が「ローマ字を日本の標準に」と提唱したのは明治18年(1885)のこと。文化審議会答申案発表の翌日は奇しくも「ローマ字の日」だった。なるほどアルファベットの分かち書きで日本語が表記されていたら、何千、何万もの漢字を覚える間に方程式の一つも解けたかもしれない。反面、漢字があればこそ繊細微妙な表現が生まれ芸術性が高まったともいえるのだが、キーボードから叩き出される漢字は果たして表現足りうるのか―と、原稿用紙と万年筆に憧れた戦後世代は考えてしまう。
言葉の乱れに追いつかない
 「言葉は生き物なので、時代とともに変わっていって当り前」というのが国語学者・大野晋博士の持論だった。漢字、平仮名、片仮名、アルファベット、記号を自在に取り込んだうえ、縦にも横にも表記できる日本語は、なるほど自由度が高いだけに、変化にも柔軟な特長がある。IT業界の記者ながら、横溢するカタカナ用語、アルファベット略に辟易していたものだから、論評でメインフレームとダム端末のオンラインを「親方日の丸」、マイクロ・メインフレーム・リンク(MML)を「護送船団」、クライアント・サーバーを「親亀・子亀・孫亀」、ITベンダーを「情報技術納入業者」と表記して失笑を買ったことを思い出す。  最近、頻繁に耳にする「全然~だよ」はわれわれ世代には違和感がある。われわれは「全然~ない」と教わったが、戦前は肯定的な意味でも使われていたらしい。なるほど文字面からいえばその通りで、肯定・否定のいずれの場合でも強調する意味には違いない。そうはいっても、建物が佇んだり(佇むのは人)、指を拱いたり(拱く=組むのは腕)、由緒が正しかったり(由緒がある)というのは、然るべくしての変化でなく、乱れではないか。漢字をどう使おうが、情報化時代に5年もの時間をかけていては、現実がはるかに先行してしまう。改定案が実施されるころには、言葉の乱れの方が大きな問題になっているのではあるまいか。
重要なのはコードの統一
 もう一つ、せっかく「情報化時代を視野に入れた漢字使用の目安」というのなら、個々の漢字を審議するなぞは木を見て山を見ぬのと同然、という議論がなければならなかった。コンピュータで漢字を処理するには、一文字ごとにコードが割り当てられなければならない。一般的な漢字はともかく、外字のコードが不統一なものだから、変換テーブルが山のように作られ、改定のたびにユーザーはたいへんな苦労をする。  地名・人名は市町村の住民管理に欠かせないが、コードが統一されていないので、データに互換性がない。点が一つ多い、縦棒が跳ねる・跳ねないというだけのために、わざわざ作ったイメージをそこに当てる。データ上はブランクなので、他のシステムにかけると空白が出てきてしまう。行政手続きの上では個人を特定できれば目的が達せられるのだから、渡邊も渡邉も「渡辺」でいい。齋藤、斎藤は「斉藤」でいいじゃないか、という議論が、なぜか出てこない。  加えて土地は国土交通省、法令は法務省、社会保障は厚生労働省、パスポートは外務省、教育機関は文部科学省、コンピュータは経済産業省と、縦割り。以上のことは国語分科会の仕事ではないかもしれないが、かかわりがない話ではない。少なくとも文部科学省には日本語、漢字にまつわる大局的な、中長期的な視点が必要であろう。5年もかけるなら、そちらの議論を深めてほしかった。

タグ:漢字
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高原友生さんが逝去、84歳 [歴史]

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12月4日に高原友生氏が亡くなったことを、新聞とネットニュースの訃報で知った。記事は「高原友生氏(たかはら・ともお=元伊藤忠商事常務、元CRCソリューションズ〈現伊藤忠テクノソリューションズ〉社長)4日午前3時11分、老衰のため東京都世田谷区の自宅で死去、84歳。岡山市出身。葬儀は近親者で済ませた」と簡素なものだった。それは広く一般の読者を想定するメディアとして当然のことだが、情報サービス産業にかかわる立場では一言も二言も付け加えておかなければならない。

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歳末派遣村対策も重要だが自殺防止策も忘れずに [政策]

 11月30日、17都道府県のハローワーク77カ所で「ワンストップ・サービス・デイ」が実施された。ハローワークが行ってきた職業相談、職業紹介、職業訓練の受講斡旋、訓練期間中の生活資金、住宅入居初期費用等貸付などに加え、市町村が担当する住宅手当や生活保護、生活支援資金の相談、さらに多重債務の相談、心のケアなどが一か所で受けられる。昨年末の歳末派遣村を再現させまじ、と政府が注力して実現したが、今回はあくまでも試行実施だ。全国で約3千人がサービスを受けた、とテレビが報じていた。

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事業仕分け 木を見て森を見ぬが如し [政策]

 行政刷新会議の事業仕分けが終了した。447事業のうち「廃止」が71、「見送り」が19。このほか「縮減」「基金返納」などで1兆6000億円(朝日)~1兆9500億円(毎日)の無駄が炙り出された。戦後60年、密室で決められてきた国家予算の使い道が公開の場で議論され、無謬の原則と聖域扱いで肥大化する官僚機構の構図を白日の下にさらけ出した効果は大きい。次世代スーパーコンピュータ開発事業の予算凍結にノーベル賞受賞者らが異を唱え、マスコミ報道も同調しているようだが、今回の判定がかえってその必要性を広く認識させることになるかもしれない。

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若者よ 立ち上げれ! [世相]

 朝日の報道に続いて、今夜のNHKニュースウォッチ9でも来年春の大卒予定者の就職内定率が7割に達していないというレポートを流していた。特に文科系4年制女子の就職が難しい。昨年秋を境に急転した日本経済は、“とりあえず”の底打ち感が広がっているが、雇用情勢は依然として厳しい。雇用調整助成金で息を接いでいる社内失職者のリストラが本格化するのはこれから。なるほどベテラン技能者より新卒者の方が給与は安いが、それで仕事が回るはずがない。就職氷河期は来年も続くと見ていい。

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